飛び込みが無理。テレアポで手が止まる。断られ続けて、朝が来るのが憂鬱。
そういう状態で「自分は営業に向いていない」と結論を出しかけている人に、ひとつだけ切り分けてほしいことがあります。
あなたがつらいのは、新規営業そのものですか。それとも、新規営業の”入り口”ですか。
この2つは別物です。そして、混同したまま「営業そのものが向いていない」と考えてしまう人もいると思っています。
私は自動車ディーラーで6年営業をして、いまは不動産の営業をしています。ディーラー時代は月600件の電話をかけていましたし、法人訪問にも行っていました。いまは反響営業です。
両方やった立場から書きます。

営業がお客様と出会う「入り口」は、ひとつではない
まず前提を整理します。営業がお客様と出会う入り口は、いくつもあります。
| 営業の入り口 | 接点の作り方 | 相手との関係 |
|---|---|---|
| 飛び込み | 自分から訪問する | 面識なし |
| テレアポ | 自分から電話をかける | 面識なし |
| メール営業 | 自分から連絡する | 面識なし |
| 既存客へのアプローチ | 自分から連絡する | 面識あり |
| 紹介 | 第三者からつながる | 信頼が一部引き継がれている |
| 反響 | 問い合わせを受ける | ニーズが顕在化している |
同じ「営業」でも、入り口が違えば精神的な負担はまったく違います。
そして多くの場合、「新規営業がつらい」と言われるときに指しているのは、この表の上の3つです。
月600件の電話をかけていましたが、苦ではありませんでした
正直に書きます。
ディーラー時代、私はテルコールを月600件かけていました。担当していたお客様が500名ほどだったので、全員に最低月1回は接触するという目標を立てた結果の数字です。
数字だけ見ると大変そうに見えると思います。でも、電話をかけること自体は、そこまで苦ではありませんでした。
理由は単純です。
相手が、まったく知らない人ではなかったから。
過去に車を買っていただいたお客様、点検で来店されたお客様。関係の深さには差がありましたが、少なくともこちらが何者かは知られている状態です。
法人訪問も同じでした。月に1回は必ず伺いますし、売れている営業マンは商談や提案がなくても月3〜4回顔を出します。取引先の社長や車両担当の方とどれだけ仲良くなれるかが、売れるかどうかを分けるからです。
ある程度の関係ができてからの電話や訪問は、それほど苦ではありません。

本当に大変だったのは、別のことでした
では何が大変だったか。時間です。
電話以外にも、試乗の対応、商談、納車準備、納車、登録前の書類準備と打ち合わせ、点検来店時の面着。やることは山ほどあります。
そして振り返ると、売れない月はだいたい、納車や書類作業に追われてお客様との接触回数が減っていた月でした。
電話が嫌でかけられなかったのではなく、物理的にかける時間がなかったんです。
営業は話す能力だけでなく、お客様と接触する時間をどう確保するかも数字に直結します。ここは案外見落とされている部分だと思います。
だから、切り分けてほしい
ここが一番伝えたいところです。
同じ「電話をかける」でも、
- 面識のない相手にかける電話
- 一度でも会ったことのある相手にかける電話
この2つは、精神的な負担がまったく違います。
「テレアポが無理」と感じている人の中には、電話そのものではなく、関係のない相手にゼロから話しかけることに強く消耗している人もいると思います。
もしそうなら、電話を使う仕事すべてが無理なわけではありません。 入り口の種類を変えれば、同じ行動でも負担はまるで変わります。
「新規開拓は無理だ」で営業そのものを諦めてしまうのは、この切り分けをしていないからだと思うんです。

反響営業に移って、何が変わったか
私はいま、不動産で反響営業をしています。
念のため説明しておくと、反響営業とは、広告やホームページを見たお客様からの問い合わせを受けて始まる営業のことです。こちらから訪問も電話もしません。分類上は新規営業ですが、飛び込みもテレアポも発生しないのが特徴です。
私の場合は、ネットからの問い合わせや電話予約で来店されたお客様を接客する仕事になります。
明確に変わったことがあります。
楽になったこと:買う気のない人に興味を持ってもらう工程がない
ディーラー時代に一番頭を使っていたのは、ここでした。
買う予定のないお客様に、いかに買い替えの興味を持ってもらい、試乗を体験してもらい、購入していただくか。
まだ買う気のない人を動かすわけですから、簡単ではありません。カルテを見て、故障の可能性や生活の変化を予想して、提案を組み立てる。この工程にかなりのエネルギーを使っていました。
反響営業には、これがありません。借りたい、買いたいと思っている人が来るからです。
その意味では、間違いなく負担は減りました。

ただし、反響営業は「楽な仕事」ではありません
ここははっきり書いておきます。
難しさが消えたわけではなく、場所が移っただけです。
競合の中から、自分を選んでもらう必要がある
反響営業で一番きついのは、ここです。
お客様との関係性がほとんどない状態で接客が始まります。しかも、賃貸なら同じ物件を他社も紹介できます。
つまり、
- こちらを選ぶ理由がまだ何もない
- 相手はすでに他社にも問い合わせている可能性がある
- 決まるまでの時間が短い
この条件下で、お客様の気持ちを掴んで、自分を選んでもらわなければならない。
ディーラー時代のように、年単位で関係を育てる時間はありません。数十分から数日で、信用してもらう必要があります。
頭を使う場所が変わっただけ
整理すると、こうです。
| ディーラー(既存中心) | 反響営業 | |
|---|---|---|
| 相手の状態 | まだ買う気がない | すでに探している |
| 主な難しさ | 興味を持ってもらうこと | 選んでもらうこと |
| 使う時間 | 年単位で関係を育てる | 数十分〜数日で信用を得る |
| 頭を使う場所 | 提案の組み立て | 気持ちの掴み方 |
どちらが楽かではなく、どちらのきつさなら耐えられるか。 選ぶならこの基準だと思います。
自分はどの入り口が合っているか
これは適性診断ではありません。 自分がどこで消耗しているかを考える材料として見てください。
飛び込み・テレアポが向いている可能性
- 面識のない相手に話しかけることに抵抗がない
- 断られても翌日には切り替えられる
- 数を打つゲーム性が嫌いではない
既存客へのアプローチが向いている可能性
- 一度でも会った相手なら苦にならない
- 短期の数字にならない接点を続けられる
- じっくり関係を育てるのが得意
反響営業が向いている可能性
- 自分から電話をかけるより、相談を受けて提案する方が得意
- 初対面でも短時間で打ち解けられる
- スピード感のある判断を求められても崩れない
紹介営業が向いている可能性
- 目の前の一人を大事にするのが得意
- 信頼を積み上げて、そこから広げていくのが性に合う
複数当てはまるのが普通です。大事なのは、いまの仕事が当てはまらなかった項目ばかりだった場合。それは能力不足ではなく、入り口が合っていない可能性があります。

それでも「営業そのもの」が合わない場合もある
公平のために書いておきます。
入り口を変えれば全部解決する、という話ではありません。
- 人と話すこと自体に強いストレスを感じる
- 相手の課題を聞くことに興味が持てない
- 数字で評価されることがどうしても苦痛
入り口を変えても、扱う商材を変えても、職場を変えても、この部分が強く苦痛なら、営業以外の道を考えてもいいと思います。それはそれで、まったく問題ありません。
大事なのは、「いまの入り口が合わない」と「営業そのものが合わない」を混同しないことです。
まとめ
- 「新規営業」にはいくつもの入り口がある。飛び込み、テレアポ、既存客へのコール、紹介、反響
- 同じ電話でも、面識のある相手とない相手では負担がまるで違う
- 私は月600件かけていたが、苦ではなかった。相手が知らない人ではなかったから
- 反響営業は楽ではない。興味を持ってもらう工程がない代わりに、競合の中から選んでもらう必要がある
- 選ぶ基準は「どちらが楽か」ではなく、どちらのきつさなら耐えられるか
「新規開拓が無理」で営業を辞める前に、自分が無理なのは新規なのか、その入り口なのかを一度分けて考えてみてください。
入り口を変えただけで、同じ人がまるで違う結果を出すことは普通にあります。

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